中小企業を取り巻く事業承継の現状と計画的な取組の必要性
事業承継とは、“現経営者から後継者へ事業のバトンタッチ”を行うことですが、企業がこれまで培ってきたさまざまな財産(人・物・金・知的資産)を上手に引き継ぎ、承継後の経営を安定させるために重要です。
事業継承の現状
中小企業の休廃業・解散は年間約4万件と高水準で推移し、経営者の高齢化も進んでいます。(図表1)代表者の多くが60歳以上となっており、事業承継の遅れは、雇用や技術の喪失といった深刻な課題につながっています。
早めの取組が必要
経営者が70歳以上の企業でも、後継者が未定または了承を得ていないケースが3割超あり、事業承継の準備が進んでいないのが現状です。税や親族間の問題に加え、経営力や関係性、ノウハウなど“見えにくい資産”の承継も大きな課題です。(図表2)これらの引き継ぎには時間がかかるため、計画的かつ早期の取組と、承継後も支援できる体制づくりが重要です。
計画的に事業承継に取り組まないと…
創業者Aは数年前から判断能力が低下。共同経営者Bも体調を崩し退任を望むが、親族内に後継者が不在。業績は悪化し、Aが連帯保証していた債務が個人資産を上回る状態に。Aの相続人に多額の債務が残る可能性が生じている。
POINT!
事業承継の準備を怠ったことで、経営の継続が困難になったケース。後継者不在が予想される場合は、早期に親族外承継も含めた対策が必要。
創業者Cは、長男Dを取締役に就任させたが、製品へのこだわりや魅力が十分に伝わっていないと感じている。Dは取引先との関係構築にも消極的で、Cは今後も顧客の期待に応え続けられるか不安を抱いている。
POINT!
後継者に会社の強みや思いが伝わらず、取引先との信頼関係が築けていない事例。現経営者が後継者と対話を重ね、事業や自社の価値を共有する機会を持つことが重要。
事業承継では知的資産の引き継ぎが重要で、時間をかけた準備が不可欠です。現経営者と後継者が早期に対話を始め、知的資産を見える化することで、円滑な承継と会社の魅力向上に繋げましょう!